2010年05月12日
5月8日琉球新報「論壇」記事

普天間基地の辺野古回帰ー海殺す自然への冒涜
私たちは沖縄のジュゴンの生息環境の保全を目的として、現存するジュ
ゴンのモニタリング調査を続けています。
報道によると政府が「キャンプ・シュワブ沿岸域案」を「修正」して米
国政府に承認を求めるつもりであると伝えています。その「修正」は建設
の工法をくい打ち桟橋方式(QIP)あるいはメガフロート方式にするこ
とと報じられていますが、ジュゴンの生息環境の観点から、私たちは両工
法とも、埋め立て同様、海の生態系を決定的に破壊すると確信します。
多数の杭によるサンゴ礁の破壊、生態系の攪乱、桟橋や浮体構造物による
振動や騒音の影響はジュゴンを追い払うことになるでしょう。
何よりもジュゴンは岸に近い深さ数メートルの浅海域に生育しているリ
ュウキュウアマモなどの海草(うみくさ)を唯一の食料としているため、
人間活動の場に近い沿岸から離れられない宿命を背負っています。ジュゴ
ンにとって唯一の餌場である海草藻場は光合成により育まれるために、陽
光の遮断はすなわち、餌場の消滅につながります。またメガフロート方式
は鋼鉄製の箱舟を多数並べてそれらをつなぎ、その上に滑走路を建設する
もので海面に浮かべた滑走路が浮動しないよう、巨大な防波堤と係留施設
の建設を必要とし、それらが太陽光を遮るでしょう。また、防波堤が潮流
を変えてしまうことは、金武湾で勝連半島と平安座島を結んで建設された
うるま市海中道路が潮流の変化でサンゴ礁生態系を撹乱させた例から容易
に想像できます。要するに、両工法ともリーフにフタをして海を殺してし
まうのです。
海生哺乳類の国際的な専門家である粕谷俊雄氏も「桟橋方式であれ、浮
体方式であれ太陽光を遮って、サンゴ礁の生態系を死滅させることには埋
立法式と変わりがないことは認識されるべきです。」と述べられています。
国民の安全を保障するという論理で、沖縄を捨石にし、新基地建設の強
行によって豊かな自然とそれに依拠する人びとの生活を破壊することは犯
罪であり、鳩山首相自ら述べた「自然への冒涜」です。市民投票から13年
、「新基地反対」を明確に掲げた稲嶺市長を誕生させた名護市民、先の4月
25日に9万人の「県内移設反対」の意思表示した沖縄県民、「この海に基地
はいらない」と決然と辺野古の浜に8年間座り続けた辺野古の住民に応えて
、ジュゴンと共に生きたいと願い辺野古の浜で6年間、非暴力の抵抗でジュ
ゴンの海に1本の杭も打たせていない市民たちに世界中のまなざしが注がれ
ています。
あなたがこの5月末までになすべきことは、移設先探しなどではなく、普
天間基地の一日も早い撤去を、米国政府に対し毅然として要求することでは
ないでしょうか。
鈴木雅子 北限のジュゴンを見守る会
Posted by 北限のジュゴン調査チーム・ザン at 11:53│Comments(0)