去る9月19日の琉球新報の「声」欄に読谷村の又吉康隆氏から『ジュゴンの
里ではない』という投稿が掲載された。7月に日本自然保護協会と連携して行
った「辺野古緊急調査」の結果、ジュゴンの食み跡が確認されなかったことを
持って、『辺野古にジュゴンがすんでいないことを証明したに等しい』というも
のだった。それに対し、9月22日の同紙『論壇』に以下の投稿をした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜以下、投稿記事
「ジュゴンの古里は?」
私たちはジュゴンの生息環境調査を行っている市民グループです。辺野古
のジュゴンの食み跡調査について9月19日付けの「声」に投稿された又吉さ
んのご意見に対しお答えします。
まず第一に、今回の少人数、短期間の調査でジュゴンの食み跡が確認され
なかったことを指して、辺野古にジュゴンは棲んでいないとすることは間違
いです。辺野古においては2004年までは食み跡は確認されています。
その後、環境アセスの事前調査という名目で国は海底に様々な機材を設置
して、ジュゴンの生息環境を撹乱しました。結果、アセスの準備書において
辺野古にジュゴンはいないと記載されました。しかし、大浦湾に度々姿を現
すジュゴンの情報を元に私たちは辺野古のジュゴンの食み跡調査を続けてい
ます。辺野古では米軍の水陸両用車の演習が頻繁に行われ、海底は無数の戦
車のキャタピラに踏み荒らされています。その中からわずか幅約15〜20
cm深さ約2〜3cmジュゴンの食み跡を見つけるのはそう簡単なことではあ
りません。沖縄防衛局のアセスにおける小型機による追跡調査でもキャンプ
・シュワブに隣接した大浦湾にジュゴンは確認され、西海岸のジュゴンも辺
戸岬を越えて辺野古海域を訪れ、かつては金武湾でもジュゴンは確認されて
いました。辺野古は沖縄のジュゴンの地域個体群の維持において東西南北の
餌場を回遊する中心部に位置しています。
第二に、私たちも参加団体であった今回の調査は日本政府が提示した建設
計画の影響を把握するための緊急調査であり、科学的な根拠を持って辺野古
海域の生物多様性の豊かさを示すことが「反基地」であると指摘されるのは
当りません。
第三に、ジュゴンが現在頻繁に利用している海草藻場に比較して、辺野古
の海草藻場は約10倍の広さがあり、ジュゴンの種の存続のためには餌場のス
トックは欠かせません。
すでに沖縄の浅海域は埋め立てや、人工ビーチによる自然海岸の消失は目
を覆うばかりです。又吉さんが「ジュゴンの保護は素晴らしい」と言われる
のであれば、ジュゴン保護においては辺野古をはじめ沖縄全体として考える
べきであり、、「ジュゴンと共に生きる豊かな風土」をいかに取り戻すかとい
う視点に立って、共に考えて行こうではありませんか?